
今、読んでいる「ないもの、あります(小学館文庫)」に思わず抱腹絶倒!昔、酒屋さんもどきの仕事をしていた時代もあって以下のコメント(私なりのダイジェスト訳)をとりあえずご紹介します。
営業で新規開拓が出来て先方の担当者と漸く会席が出来たときに発するのが、とりあえずビールにしましょうか?なのである。それでなくても夕方はそうである。ちょっとした小綺麗な居酒屋などに入って、とりあえず、といえば必ずビールなのだ。昼間でも、とりあえず、といえばビールのことが多い。必ずとは言えないまでもちょっとした居酒屋・小料理屋というより、蕎麦屋も多い。しかし蕎麦屋も危ない。そばやというのはそもそもとりあえず的で、お昼でない三時や四時ごろ、ちょっと、とりあえず、と暖簾をくぐってそばをちょこっと食べたりする。堂々とした、押しも押されぬ昼食や夕食というのではない。その中間の、隙間家具的な
ところで、とりあえず、ざるそば、となったりする。それがそばやに入って、とりあえず、そば、となれば済んでしまうのですが、蕎麦屋にはそもそも、とりあえずの空気とDNAが充満している。昼間でも、そばの前に、ちょっと、とりあえず、ということになる。ターゲットはもちろんビールである。お客と二人ならまだしも、数人をご接待すると、メニューを決めかねているうちに、とりあえず、という言葉が自然に飛び出してくる。
「ちょっと・・・どうしましょうか?」と言ってしまう。主語がない。
「いいですねぇ・・・」と答えてくれる。
「ねえ」
「いや、やぶさかではないですよ・・・」という具合に、なおも主語を避けながら、「じゃあ、とりあえず・・・」という具合に、いよいよ主語の登場する舞台が整う。というとき、一人だけお堅い担当者が「いえ、昼間は勤務中ですから・・・、でもどうぞ、召し上がってください・・・」ということになり、主語がないのに通じてしまって、
「じゃあ・・・」
「とりあえず・・・」
「二本ぐらい・・・」という、主語が登場しての注文となるのである。
ビールの場合、主語を避けるという傾向がある。慎重に主語を避けながら、いや特に慎重というわけではないが、何となく主語を避けながら、会話者どうし、ぐるーりとその周りを回りながら、少しずつその主語を浮き彫りにしていきながら、その場の暗黙の根回しがすんだ感じのところで、「とりあえず・・・」となる。まずは、とりあえず、である。その「とりあえず」が出たときには、それはもうビールである。ビールという主語を避けるようにしながら話が進み、とりあえず、といえばそれはビールをさすことになって、ビールという主語は消滅する。
アサヒスーパードライなんていわずにアサヒ「とりあえず」というネーミングにして、商標登録したら業界の追随を許さないかもしれない。店の人に「すみません、とりあえず!」というだけで、ビールが出てくる店は五万とある。ビールは超能力を持っている。会話を引きずらないでさっさと「とりあえず!」言ってしまうほうが話はスムーズに流れる。いまはとりあえず、ビール二本くらいでいいのでしょう?
うーん やっぱり私もとりあえずが多いです!
返信削除五右衛門